2010.02.11 Thursday
東出祐一郎『ケモノガリ』
平凡な顔、平凡な成績、何もかもが平凡な少年。だが誰にでも一つくらいは取り得がある。彼の場合はそれが「殺人」だった―。東欧小国で修学旅行中の生徒たちが拉致された。犯行グループは財閥の好事家たちによる「狩猟クラブ」。GPSを埋め込まれ、「人間狩り」のゲームが始まる。しかしその時、予期せぬ「トラブル」が起こった。「少年」=赤神楼樹の「才能」が、極限状況下で開花してしまったのだ。逆転するゲーム、狩られる「ケモノ」は、どっちだ―?人気ゲームメーカーpropellerの東出祐一郎、激昂のオリジナル小説デビュー作。(「BOOK」データベースより)
エンターテイメントここに極まる、とでも表現すれば良いのだろうか。これといった世界観の説明も、背景の補足もなく、唐突に虐殺空間に放り込まれる主人公たち。『バトルロワイヤル』と言うより『クリムゾンの迷宮』に近しい雰囲気のなか、何のとりえもなく、平凡を象徴したような少年の秘められた才能が開花する。覚醒した主人公は、おおよそ高校生とは思えぬ超人的技量で以って、迫りくる敵勢を逆に圧倒する。とは言え、それでも万能ではないため、ひとりまたひとりとクラスメイトたちの命が儚く虚しく散ってゆく。本書は、そんな様子を楽しむだけの作品だ。特異な能力を持った敵も、しかし明確に由縁が語られることはなく、むしろ類型的な、科白ですらない絶叫をあげながら攻めてくるだけ。それに対し主人公たちも罠を仕掛けるだとか、策でもって迎え撃つのではなく、覚醒した主人公の超人的身体能力によってのみで避けようとする。ハリウッド的、とでも言うのだろうか。計算され尽くした、面白いけれど薄っぺらい、そんな小説だった。





