2007.07.04 Wednesday
伊藤計劃『虐殺器官』
サラエボが核爆弾の炸裂によって、この地上から消滅したとき、ヒロシマの神話は終わりを告げた。完璧に制御され、管理されている限り、核は地球を滅亡に追いこむ終末の象徴ではなく、実戦に投入できるひとつの兵器になったのだ。激化するテロ、繰り返される虐殺、暗躍する謎の米国人ジョン・ポール。虐殺器官の謎を追う、アメリカ情報軍・特殊検索群i分遺隊のクラヴィス・シェパード大尉が見たものは……!?
小松左京賞最終候補作。近未来を舞台とした軍事SF。最初のうちはおびただしい量の死が、硬質だがどこかしら知的な文章で綴られているのを見て、いわゆる巧いだけの小説かと思った。が、第二部でジョン・ポールに接近したあたりから、この小説のほんとうの姿が見え隠れしはじめ大興奮。特にピジンやクレオールの説明を経て、虐殺器官を目覚めさせる言語に関してを解説するくだりなどは思わず息を呑むような出来。そのまま一気に最後まで読み進めてしまい、エピローグに広がっていた荒野に鳥肌がたった。累々と死者が横たわるこの表紙は、本書をえがく描き出していると思うけれど、もっと、もっと空虚だ。







