2007.09.08 Saturday
中村九郎『神様の悪魔か少年』
「僕はある最年少記録」を持っている」十数年前、母親を殺した少年は呟く。手元にはストップウォッチ。数字がゼロになるとき、彼の時効は成立する。それまで彼は逃げ続けなくてはならない、隠れ続けなくてはならない。平穏無事に日常を過ごすために、彼は悪童となる。悪事を働き、悪人となることで周囲の目をごまかす。
Style-Fから刊行された中村九郎の青春小説。なんと従来の中村作品に登場してきたファンタジィ要素が一切ないのだ。文体までいつになく読みやすい代物で、長さにさえ目を瞑ってもらえれば、今まで中村九郎を嫌悪した読者でも十二分に楽しめる傑作に仕上がっている。ポエティカルで整合性のない文章はなくなってしまったが、ロマンティックな想いは残っている……どころか、登場人物たちの交わす恋は身もだえするほど素晴らしかった。くうう、Style-Fの開始を決意した富士見書房に感謝の意を伝えたくて仕方がない。この作品はアニメ調のイラストが表紙を飾る文庫本では、けして書かれなかっただろう。ああ、この運命に乾杯。
この作者の他の作品の感想:『黒白キューピッド』『アリフレロ キス・神話・Good by』『樹海人魚』
感想リンク:雲上四季 のべるのぶろぐ










